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イリュージョニスト
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    『イリュージョニスト』を見てきました。

    監督は『ベルヴィル・ランデブー』でお馴染みシルヴァン・ショメさんです。

    『イリュージョニスト』パンフレット
    『イリュージョニスト』パンフレット ¥800

    実はうっかり見逃してまして、もうこのまま見ないで済ませてしまおうかと思ってた矢先、動画の先生から「動きがとてもよくできている。女の子がいるのだけど、その子が登場した当初のやぼったい動きと、洗練されてからの歩き方が見事に描きわけられている。他の人物もそれぞれ体形がよく考慮されていてすばらしい」と聞き、見に行ってきました。


    動画の先生のオススメだったということもあり、冒頭は人物の動きなど技術的な部分に注目して見ていました。
    ショメ監督の作品には毎回、極端にデフォルメされたとても個性的なキャラクターが多数登場します。そして各々がそのユニークな体形に合わせてリズムを刻む心地よさが特徴的です。また背景や車などではCGと手書きをとても冷静によく使い分けていて、現代の技術だからこそ再現できるノスタルジックな世界観が見事に築き上げらています。今回もまた確かな技術力で、観客を見た事のないはずの1950年代のヨーロッパにあっという間に引き込んでくれました。

    でも、技術的なことに注目していられたのは冒頭のほんのひととき。
    すぐにこの映画の真価をそんなところに留めておくのはもったいない!と思うようになりました。


    それぞれが個性的に動き回る、その一挙手一投足からキャラクターの人物像や感情・思考が次々に流れ込んできます。そのうち今度は、登場人物たちへの愛情が、自分の中にむくむくとわき起こってきて、心の中がいっぱいになってしまいました。
    本当はごくごく脇役で出てきたパグ犬についてまでも、その可愛らしさを語りたいとことですが、あまりに長くなってしまうので、主人公タチシェフについてだけ、触れておこうと思います。


    物語は老人マジシャン、タチシェフの閑散としたマジックショーから始まります。
    かつては人気のあった時代もあったのでしょう。しかし、物語が始まったとき、タチシェフはすでに時代に置いていかれた場末のマジシャンとして登場します。時代は新しい音楽や価値観に飛びつき、マジックに興味を示すのは少数の老人たちくらい。連れ添いは凶暴な白ウサギが一羽いるだけ。放浪の日々を送る寂しい老人マジシャン、それがこの物語の主人公です。

    そんなタチシェフが田舎でとある少女アリスと出会います。
    こうして物語はゆっくりと進み始めるのですが…


    もうタチシェフの人間味がたまらなく愛さずにはいられないのです。
    タチシェフはひたすらアリスの期待に応えようとがんばり続けます。でもがんばりきれないのです。またアリスは純朴すぎるが故にとても残酷な一面も持っていて、せっかくタチシェフが買ってくれた赤い靴をあっさり脱ぎ捨てていったりするのです。そんなアリスの脱ぎ捨てていった赤い靴にがっくりしても決して怒ることのないタチシェフ、無理なバイトで失敗だらけのタチシェフ、うさぎの心配をするがアリスにはなにくわぬ顔をつらぬこうとするタチシェフ、そして、マジシャンとしての誇りを捨てずに、人生の選択をしたタチシェフ。こんなにも愛してやまないキャラクターに出会ったことはありません。特に気に入ってしまったのは早朝起きてからの運動。あ!私も同じ!と思ってしまうシーンがきっと誰にも見つかることと思います。

    しかし何よりもぐっときたのは、ラストの車内で女の子に鉛筆を渡したシーンでした。
    よくよく見ると、アリスは左利き、もしくは両利きです。そして、ラストの車内で出てきた小さい女の子もまた左利きの女の子。鉛筆を拾いあげてから差し出すまでのほんの一瞬、タチシェフの中に起こったであろう葛藤と決心を思うと、切なくてたまりません。

    ★ ★ ★ ★ ★

    実は私はショメ監督のファンではありますが、彼の脚本はそれほど好きではなかったのです。(好きじゃないだけで、とても優れていると思ってます)
    なので、今回の作品でこんなにも感動する脚本に出会うことになるとは全く思わずに見に行ってしまったのです。そうしたら、こちらの作品は脚本はショメ監督ではなく、フランスの喜劇王ジャック・タチという方が残されたものだったことをあとから知りました。

    同時にこれが主人公タチシェフの体形の秘密だったのかということも知りました。マジシャン、タチシェフは長身で腰の位置がとても高いのです。短足の日本人から見ると常にバランスが悪くて、どうにも体重がふわふわと宙に浮いていそうな歩き方をしていたのですが、この体形も歩き方もそのまま喜劇王ジャック・タチのものだったのでした。

    ★ ★ ★ ★ ★

    『イリュージョニスト』がショメ監督の手によって映画化されたのは本当にすばらしい奇跡だと思います。ショメ監督の隅々にまで行き届いた遊び心とすばらしい技術力があったからこそ、ジャック・タチの脚本を繊細に、ここまで愛情深く表現できたのだと思います。オフィシャルサイトのレビューにもありましたが、ショメ監督は巨匠の一人になったと思います。

    書きたいことは山ほどあるのですが、あとはどうかご覧になった方がご自身で感動していただくために、とっておこうと思います。




    posted by: anikoromushi | - | 19:59 | comments(0) | trackbacks(0) |









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